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Web会議の音質問題は、機器の性能だけが原因ではありません。「設定ミス」「部屋の残響」「集音距離」という3つの観点から原因を切り分けることが重要です。本稿では、それぞれの原因を整理し、自分の会議室に必要な対策を見極める方法を解説します。
重要なポイント
音声トラブルの大半は故障ではなく設定ミスか環境要因であり、機器を買い替える前に無料で直せる領域が存在する
全指向性マイクは「360度を拾う」だけで「遠くまで拾う」ではない。集音距離は別指標として確認が必要
エコーはスピーカー音をマイクが再収音する物理現象であり、対策は「分離」か「エコーキャンセリング」の二択
会議室の広さに応じた機器構成を選べば、小会議室の1台から大会議室の複数台連携まで無駄なく設計できる
「Web会議の音質が悪い」と感じたとき、原因の9割は機器の故障ではありません。デバイス選択の設定ミス、部屋の残響、そして「集音距離」の錯誤——この3つの層のどこで問題が起きているかを切り分ければ、対策は自ずと決まります。本稿では、Web会議の音質改善を「無料で直せる層」から「機器投資が必要な層」まで順序立てて解説します。
多くのオフィスで繰り返されているのが、「声が聞こえないから高いマイクを買う」という順序の誤りです。実際には設定画面を2カ所直すだけで解決したり、会議室のブラインドを閉めるだけで劇的に改善したりします。逆に、機器を替えても直らない問題もあります。まず全体像を押さえましょう。

音質問題は3つの層で起きている
Web会議の音声トラブルは、発生する層によって対処がまったく異なります。設定層・環境層・機器層の3層で切り分けるのが、最短で解決するための考え方です。
第1層:設定ミス。 「相手の声が聞こえない」の典型例は、Zoomなら「コンピューターオーディオに参加」を押していない、Teamsなら出力デバイスが内蔵スピーカーのまま、というものです。自分の声が届かないケースでは、PCに接続された複数のマイク(内蔵マイク、Webカメラのマイク、ヘッドセット)のうち、意図しないものが選択されていることが頻繁にあります。これらはゼロ円で、しかも30秒で直ります。
第2層:環境要因。 エアコンの送風音、キーボードの打鍵音、ガラス張りの壁が生む残響。これらは機器の性能以前の問題です。同じ機器でも、カーペットとカーテンのある部屋と、コンクリート打ちっぱなしの部屋では聞こえ方が別物になります。
第3層:機器の限界。 設定を直し、環境を整えても「端の席の声が届かない」「エコーが残る」場合に限り、機器の能力不足という結論に至ります。この順序を守るだけで、不要な買い替えと稟議の往復を回避できます。
エコーとハウリングの正体を理解する
エコーとは、スピーカーから出た相手の声をマイクが拾い直し、再び相手に返してしまう現象です。ハウリングはこの循環が増幅され、「キーン」「ピー」という不快音になる状態を指します。つまり両者は同じ物理現象の程度差であり、対策の原理は共通です。
この原理を理解すると、なぜ「同じ部屋で2台のPCが同じ会議に入ると音が酷いことになる」のかが分かります。2台のスピーカーと2台のマイクが互いの音を拾い合うため、循環経路が複数できてしまうのです。対処は簡単で、音声参加は1台に絞り、残りはオーディオを切断します。
もうひとつ重要なのが、「マイクとスピーカーが一体になった機器ほど、エコーキャンセリングが必須になる」という点です。一体型は構造上、スピーカーとマイクの距離が近く、物理的な分離ができません。だからこそ信号処理で打ち消す必要があり、この処理の質が機器の実力差として現れます。
マイク選びで注意したい「全指向性」の落とし穴
ここに、会議用マイク選びで最も多い誤解があります。全指向性は「360度どの方向の声も拾う」という意味であり、「遠くの声まで拾える」という意味ではありません。 方向のカバー範囲と、集音できる距離は、まったく別の指標です。
音は距離の二乗に比例して弱まります。マイクから1mの人と4mの人では、届く音量に原理上の大きな差が出ます。この差を機器側で吸収するのがオートゲインコントロール(AGC)で、近い人と遠い人の音量を自動で揃える機能です。「マイクの隣の人だけ声が大きくて、端の人の声がかすれる」という会議室あるあるは、集音距離の不足とAGCの不在が重なった状態です。
では部屋の人数とマイクの関係をどう考えるか。目安として、4〜6名の小会議室ならテーブル中央の1台でカバーできる設計のもの、10名前後の中会議室なら集音距離に余裕のあるモデル、それ以上は複数台連携という順に選択肢が絞られます。「何人で、どの形のテーブルで使うか」を先に決めることが、製品比較より先に来るべきステップです。
スピーカー側の問題が見落とされる理由
Web会議の音声改善はマイクに注目が集まりがちですが、「聞き取りにくい」の半分はスピーカー側の問題です。相手の声が小さい、こもる、音が割れる——これらは出力側の話です。
PC内蔵スピーカーは、薄型化のために低音と音量の余裕が犠牲になっています。人の声の聞き取りやすさは中音域の明瞭さに依存するため、音楽再生向けに低音を誇張したスピーカーでは、かえって声が埋もれます。会議用途では「声の明瞭さ」に特化したチューニングが効きます。
また、出力音量の余裕はハウリング対策とも関係します。音量不足を音量目一杯で補うと、エコーキャンセリングの処理限界を超えて破綻することがあります。「静かな部屋で余裕を持って鳴らせる」こと自体が、音質の一部なのです。
部屋の広さ別:失敗しない機器構成
部屋の広さと参加人数から逆算するのが、機器選定の基本です。
小会議室・ハドルルーム(〜6名程度) は、テーブル中央に置く1台構成が基本です。ここでの失敗は「性能不足」ではなく「ケーブルが届かない」「置き場所に困る」といった物理運用の問題が支配的です。
中会議室(〜10名程度) では集音距離とAGCの有無が効いてきます。テーブルが長い場合、中央1台では端の席が不利になるため、配置の工夫か拡張性のある機器が候補に入ります。
大会議室(10名超) で重要なのは「1台の高性能機」ではなく「複数台の分散配置」という発想です。音の物理は距離に逆らえないため、部屋を分割して担当させる設計が合理的です。具体例として、Nearity A20SはPoEデイジーチェーンで最大6台まで連携でき、約15㎡の小会議室の1台から約60㎡の大規模会議室まで同じ機器で拡張できます。

プラットフォーム別の注意点
Zoom、Microsoft Teams、Google Meetでは、それぞれアプリ側の音声処理と設定項目が異なります。注意すべきは「アプリ側のノイズ抑制と、デバイス側のノイズ処理の二重適用」です。両方を最大にすると、声の一部まで削られて「途切れ途切れに聞こえる」という問題が起きます。どちらかを主、もう一方を弱めにするのが原則です。
環境整備:機器を導入する前にできること
最後に、無料〜低コストで効く環境対策をまとめます。カーテンやブラインドを閉める、会議中はエアコンの風向きを調整する、机の上の書類の山(音を乱反射させる)を片付ける、マイクの近くにノートPCの排気口を向けない。これらはいずれも残響とノイズの発生源を減らす施策です。
環境を整えてもなお機器の限界が見えたら、それが投資のタイミングです。Nearity A20Sの製品ページでは、8基のMEMSマイクアレイ、AIノイズリダクション、エコーキャンセリング、残響抑制といった音声処理の仕様と、部屋の広さに応じた構成例を確認できます。
スピーカーフォン選定の5つの基準
機器選定に進む場合、次の5つの基準で評価すると抜け漏れが防げます。
基準1:集音範囲と推奨人数が部屋に合うか。 最初に見るべき数字です。4〜6名の小会議室と10名超の大会議室では要求がまったく異なります。「全指向性」の表記だけで判断せず、実際にカバーできる距離と人数を確認してください。
基準2:音声処理がデバイス側に揃っているか。 一体型では、エコーキャンセリング・ノイズリダクション・オートゲインコントロールの3点が実質的な必須要件です。特にAGCは「近くの人だけ声が大きい」問題を機器側で吸収する機能で、複数人利用では効きます。
基準3:接続と給電の方式。 USBでプラグ&プレイ認識されることは大前提です。加えて、複数台を使う可能性があるなら、連携時の配線と給電の仕組みを確認します。台数が増えたときに電源とケーブルが増殖しない設計かどうかが、運用負担を分けます。
基準4:操作が説明なしでできるか。 音量とミュートが直感的に操作できること。不特定多数が使う部屋では、「前の人の設定が残っていて戻せない」がトラブルの定番です。
基準5:拡張の方向性。 今は小会議室でも、将来広い部屋で使う可能性があるなら、同じ機器を増設できる設計が安心です。買い替えではなく増設で拡張できるかどうかを確認してください。
設置と配線:導入時に確認したいポイント
機器が届いてから気づく問題の多くは、設置と配線に関するものです。導入前に確認したいのは次の3点です。
まず電源位置です。会議テーブルの中央に置きたくても、コンセントが壁際にしかない部屋は珍しくありません。機器の設置予定位置から電源までの距離を測り、ケーブルが届くかを確認します。
次に配線経路です。床を這わせると椅子のキャスターや足に引っかかり、接触不良と転倒の原因になります。テーブル脚やモールに沿わせるなど、踏まれない経路を確保してください。
最後に増設の見通しです。今は1台でも、部屋の使われ方が変われば増やしたくなるかもしれません。そのとき、配線をやり直さずに足せる設計かどうかが、将来の手間を決めます。ケーブル1本で次の機器へ電源と接続を渡せるデイジーチェーン型は、この点で有利な方式です。
よくある失敗パターンと回避策
最後に、導入後に後悔しがちなパターンを3つ挙げます。
「大は小を兼ねる」で過剰な機器を買う。 集音範囲の余剰は、必要ない方向のノイズまで拾うことを意味します。部屋に合ったサイズが最適解であり、大きいことは正義ではありません。
「設置して終わり」にする。 機器は置いただけでは性能を発揮しません。置き場所、音量、相手側への確認テストまで含めて導入です。本番の会議の前に、必ずリモート側と声の確認をしてください。
「機器任せ」で環境を直さない。 残響の多い部屋の問題を、機器の処理だけで解決しようとすると限界があります。カーテンを閉める、吹き出しを避けるといった無料の対策を先に尽くすことが、機器の性能を最大限に引き出します。
プラットフォーム横断で考える機器の条件
社内で使う会議ツールが1つとは限りません。社内はTeams、取引先とはZoom、別の相手とはGoogle Meet——こうした混在は一般的です。機器選定では「対応プラットフォーム一覧」の有無よりも、OSが標準のオーディオデバイスとして認識するかどうかが本質的な条件になります。
会議アプリは、OSが認識したマイクとスピーカーを使う構造です。つまりOSの層で標準認識される機器は、ツールが変わってもそのまま動きます。逆に、専用ソフトや独自ドライバーが必須の機器は、ツールやOSの更新のたびに互換性を確認する手間が生まれます。長く使う会議室の機器ほど、「どこに挿しても普通に動く」ことの価値は高いのです。
投資判断:いつ機器を買うべきか
最後に、投資のタイミングについて整理します。次の3つのサインのうち2つ以上に該当するなら、機器の検討を始める段階です。
- 設定と環境を整えても、リモート側からの指摘が減らない。 無料の対策を尽くしても残る問題は、機器の領域です。
- 複数人での会議が週に複数回ある。 利用頻度が高いほど、音声トラブルの時間損失は大きくなります。
- 重要な会議で音声の不安がある。 取引先や役員が参加する会議で「聞こえますか」から始まるのは避けたい状態です。
逆に、1人での参加が中心で、設定の見直しで改善が見えているなら、急いで機器を買う必要はありません。投資の判断は「誰の、どの会議の、どの問題を解くか」が明確になってから——それが結果的に最も安く、最も効く買い方です。
機器選定で比較表を作るときの注意
最後に、複数機器を比較する際の落とし穴に触れます。比較表は「1台あたりの価格」で並べがちですが、本当に見るべきは「その部屋を成立させる総額」です。1台で済む機器と、同じ部屋に2台必要な機器では、価格の比較の意味が変わります。増設時の配線や電源の要否、ドライバーの必要性まで含めた総量で比較してください。安い機器が、必要台数と運用負担で逆転する——これは会議室機器の比較でよくある構図です。
よくある質問
Web会議の音質が悪い原因は何ですか?
多くの場合、故障ではなく設定ミスか環境要因です。デバイス選択のズレ、ミュート、音量設定という「設定層」、残響やエアコン音という「環境層」、そして集音距離不足という「機器層」の3層で切り分けると、対策が明確になります。設定層は無料で即解決できるため、必ず最初に確認しましょう。
PC内蔵マイクと外付けスピーカーフォンは何が違いますか?
内蔵マイクは「PCの正面にいる1人の話者」を前提に設計されています。複数人がテーブルを囲む会議では、距離による音量差と周囲のノイズ拾いが避けられません。スピーカーフォンは部屋全体の集音、エコー処理、複数人の音量均一化を前提に作られており、会議室での複数人利用に適しています。
エコーやハウリングを止めるにはどうすればいいですか?
まず同じ部屋で複数デバイスが音声参加していないか確認し、1台に絞ってください。次にスピーカーとマイクの距離・向きを見直します。それでも解消しない場合は、エコーキャンセリングを搭載した会議用機器の導入が根本対策になります。一体型機器ではこの機能の有無が実用上の差になります。
会議室の広さでマイクの選び方は変わりますか?
変わります。小会議室なら1台で完結しますが、中規模以上では集音距離の余裕や、複数台を連携できるかどうかが選定軸になります。「全指向性」の表記だけで判断せず、実際に拾える距離と人数の目安を確認してください。部屋の面積から逆算するのが失敗しない順序です。











































